ウツクシマフクシマ

アーバンではなくサバーブ■だからこそできるものづくりがあると思います■それは負け惜しみではなく,都心に対抗しようとすることでもありません■現在もしくは少しほど前,地方郊外では,都市のアイデンティティを確立させましょう,とかグリーンツーリズムによって県外からの集客を目指しましょう,など地方郊外独特の手法を構築しようとしていたのかもしれません■ただそこでいうアイデンティティは都心によって定義された価値観に制限されていたり,はたまた都心が上位であることを前提として,集客をつのっていたりするのです■ですが10年後,世界はかわります■現在もそうですが,都心からの実際の距離はインターネット環境の充実により無効化されます■実距離による情報発信の障害はなくなります■そして,日本全体の人口が激減します■少子高齢化という単語は皆さんよくお聞きになると思いますが,本当に10年後に人口が減っていく,という未来は未だイメージがわかないものです■日本の人口が,特に都心の人口が激減するということは,建築も土地も,家具やおもちゃ,この世にあるものが全て余ってくることになります■それはいままで進んできた道を引き返さなければならないことになります■私が地方郊外に可能性があると感じるところはそこです■現在は勿論,地方郊外は都心のずっと後方から都心を追っかけています■事実,福島にも10年前に東京に建てられていたような施設がつくられています■このまま追いかけ続けて,同じ折り返し地点を引き返すのではなく,東京よりも先に後ろ向きに歩いていけば良いわけです■この場合,走る必要はありません■福島のスピードで,誠実に,歩いていけば良いわけです■ウツクシマフクシマという県のキャッチコピーが言い表すように,ないものをねだるような開発ではなく,福島に昔からずっとある,うつくしいものを大切にしてものづくりを行っていければいいのです■この“ふくしまにあるもの”とは決して“ふくしまにしかないもの”という意味ではありません■全国各地にある,ものでも風景でも構いません■ただ“ふくしまにあるもの”であればいいんです■BHISはそんな,“ふくしまにあるもの”で後ろ向きにゆっくり歩くようなものづくりを行っていきます■

ケンチクイカ

BHISでは建築よりもちいさなスケール(建築以下)でものづくりを行ないます■それは,ちいさなスケールでものづくりを行なうことが,おおきなスケール(地域)に対しても効果を発揮することになると考えているからです■ふくしまのような地方郊外の場合は,多くの住宅が建売住宅であったり,もしくは設計施工一体型の工務店による住宅だったりします■そして,その建設費も、坪30〜40万円でつくられているものも少なくありません■勿論それは,建築家の立場として考えれば喜ばしいことではありません■建設費が少ないということは,それだけ建材は安価なものを用いる必要があり,サッシなども既製品を用いてコストをできるだけ抑えることになります■それは,建築をつくることに対する“こだわり”を断念することになります■こだわりは,お施主さんや建築家によって異なります.安全性,快適性,意匠性,部屋の広さだったりします■勿論,その定められた予算の中で“こだわり”のプライオリティを明確にし,よりよい建築へと昇華させることも建築家の職能です.ですが,上記のような論理は建築家のエゴも少なからず含まれています■全国的に有名な大手のハウスメーカーでは,大量生産とその流通システムにより上質のオリジナル建材を安価で使用することが可能です■地元の工務店では,設計と施工の連携により,コスト削減や工期の短縮を可能にします■どちらも素晴らしく,個人の建築家には持ち得ないことです■では,意匠面では建築家は勝るのでしょうか■それも最近のハウスメーカーではデザイナーズ住宅と称して,高い意匠性をもった住宅を提供しています■そんななかで,地方郊外の建築家には何ができるのか■それは,徹底したオーダーメイドを行なうことと,ちいさなスケールで数多く提供することで,上記のような住宅(以下,一般的住宅)と共生することにあります■多くの人々が一般的住宅で不自由なく生活しているなか,足りないものは何か■もしくは,多くあって困らないものは何か.それは“とっておきの場所”です■そのような“とっておきの場所”は徹底的にその住人と,その敷地と対峙することでつくりあげることができます■そしてそこには,建築家のデザインセンスも,やっとのことで活躍の場を得ることになります■そして,地域郊外の一般的な住宅には,喜ばしいことにまだ隙間と呼べる箇所が多く残っています■それは,採光のために空けられた南側の庭であったり,使われていない離れであったり擁壁としてたてられたコンクリートブロック塀だったりします.これは地方郊外特有の隙間です■他にも,家族構成の変容による空き部屋であったり,壊れた家具も住宅の隙間と呼ぶことができます■BHISでは,そのような隙間に対して,小さなスケールで“とっておきの場所”をつくっていきます■小さいからこそ,数多く提供することが可能となります■そして多くの“とっておきの場所”がつくられることで,地方郊外全体が,少しずつですが,おおきくかわっていきます■

ケンチクカイカノショクノウ

建築士の資格を持つことが建築家になることと同義だとは考えていません■社会に対して小さくても何かしらのアクションを起こしている人間でなければ,建築家ではないように思います■そして,私は現在,建築士の資格を所有していません■私自身の現状を「建築家以下」と定めた場合,私が社会に起こせるアクションは大きく制約されています■しかし,その制約の中にこそ,面白い領域が隠されていると考えています■実はあまり知られてはおりませんが,建築士の資格を持たない人間でも,100‡u以下の木造と30‡u以下のRC造や鉄骨造などをつくることができるんです■「建築家以下」による設計の領域は,世の中の誰でも設計者になれる領域だからこそ,多くの“建築”を生み出す領域になる可能性を持っています■昨今DIYブームが起こり,ご自分で,またはご家族で家具や作業小屋などをつくる方々が増えました■ですが,DIY(上記した工作物)は建築業界などのメディアに取り上げられる機会は少なく,日の目を見ないことが殆どです■“建築”の善し悪しに規模は全く関係なく,最近では小さくても良いものは評価されている建築業界だからこそ,DIYのような建築活動が見直されるべきだと思います■BHISでは見直していきます■DIYでつくれるものであっても,コンテクストを読み込み,コンセプトを構築し,丁寧に設計を行っていく■そうすることで,DIYが“建築”の領域として認識されるようになります■それは,“建築”の領域を拡げると供に,“建築”の文化をより人々に身近に感じて頂ける大きな機会になります.■それこそ「建築家以下」の職能だと考えます■

参照:建築技術教育普及センター/建築士の業務範囲  (http://www.jaeic.or.jp/k-gyousyu.htm)